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顎関節症治療のトピックス -歯科口腔外科-

はじめに

顎関節症治療は、世界の歯科界においてもっとも論争が続いている分野の一つです。過去25-30年の間に顎関節症治療に関して出された論文では、1)かみ合わせの善し悪しとは関係ない、2)原因の探求とその除去をするという医学的モデルに基づいた診断と治療を推奨、3)生物・心理・社会的な考え方で保存的な治療法を行い、4)さらに行動療法を加えるべき、などが結論されていました。さらに、顎関節症患者さんの中には、通常の治療に反応せず慢性疼痛となることも明らかとなり、このような複雑な経過をたどることについて解明することに焦点を当てた研究が多く行われるようになっています。 それらの研究の成果として生み出されたものは、臨床研究にたずさわる専門歯科医の間では広く受け入れられていますが、一般歯科医師の間では議論が存続しており、科学と臨床の間に大きな溝があります。米国ではこの溝を埋めようとする試みが繰り返し行われていて、最近では2010年3月、米国の最も権威ある米国歯科研究学会(AADR)が顎関節症(TMD)診断、治療に関する方針声明を発表しました。

米国歯科研究学会(AADR)による顎関節症(TMD)診断、治療方針声明

この声明は、顎関節症において現時点ではもっとも真実に近いと考えられている"標準治療"です。すべての歯科医師がこの声明に沿って治療するならば、顎関節症患者が不適切な治療を受ける危険性が減少し、それぞれの患者さんが実際に必要としている専門的治療を得られる可能性が高くなるはずです。
ここでは最近の顎関節症治療について、米国歯科研究学会(AADR)による顎関節症(TMD)診断、治療方針声明で強調された点を解説します。なお、当科ではこの声明が出される前から、声明に書かれた世界標準の顎関節症治療を行っています。当科の顎関節症治療の全般に関してはKOMPAS「顎関節症」を参考にしてください。

1. 顎関節症の診断は問診による病歴聴取と身体的な検査によって行い、必要に応じてレントゲン等の画像検査を行う。特殊な診断機器についてはその有効性が示されたものはない。

1)患者さんに症状の経過について聞く問診と臨床検査では、何を聞いて、何を検査するか?

最初に、問診で患者さんの最も辛い症状や受診したきっかけ、症状の現れ方(痛み、開口障害、音、かみ合わせの異常、その他)を聞いて、患者さんがどんな症状を持っているかを確認します。次に、その症状を作り出している病態は何かを突き詰めるために検査を行います。開口量(自発、強制)を計り、下顎の運動経路、下顎頭の滑走状況を調べます。痛みの元が何か、開口障害の元が何かを探って、関節検査(関節痛誘発、下顎頭可動性、雑音誘発)、筋肉検査(筋の大きさ、筋の固さ 筋圧痛、関連痛)を行います。
病態検査と並行して、病態をつくりだしている原因も探します。原因問診として日常生活でかみしめていることはないか、睡眠状態はどうか、寝る前と起床時の顎の疲労度はどうか、最近の生活状況、ストレスはどうか、さらには、精神的に安定しているかどうかも聞きます。そして、下顎の緊張状態、咬合状態(偏位、咬耗)、顔貌(顔の表情)の左右対称性などを調べます。ここまでの検査によって、患者さんの症状をつくり出している病態が関節にあるのか筋肉にあるのか、さらに他の原因によるものかの診断でき、また、その病態の原因も推定できます。

2)画像検査について

顎関節に痛みがあり、雑音が強い場合には関節部の骨の変形が疑われることがあります。その様なときには、パノラマレントゲン、コンビームCTを撮影して確認することが有用です。顎関節症の診断機器として顎運動計測装置、筋電図記録等が使われることがありますが、上に述べた臨床的検査によって得られる所見以上の情報は得られないと結論されています。

2. 顎関節症治療は保存的、可逆的療法によって行う。

現在、顎関節症治療として勧められているのは、歯を削ったり足したり、あるいは手術などの元に戻すことのできない変化をもたらす不可逆的な治療ではなく、まずは患者教育に基づく患者さん自身のセルフケアです。1)で述べた診査、診断により判ったことを患者さんに正確に伝えます。症状の元となる病態、その原因を伝え、それぞれに対する治療法(対症療法、対病態療法、原因療法)を呈示します。同時に、それぞれの治療による予後(どんな経過をたどるか)の情報も示します。治療法の中には、医者側でやるべき治療、患者さん自身がやるべき治療(セルフケア)があります。患者さんにはかみ合わせの異常に関心を持っている人もいますから、かみ合わせの異常ではないことから咬合治療は行わないことを説明します。セルフケアには、症状をこれ以上増悪させないために原因除去のセルフケアと症状を積極的に改善させるためのセルフケアがあります。また、対象として関節障害に対するセルフケア、筋障害に対するセルフケアと顎関節症全般に共通するセルフケアからなります。必要に応じて、スプリント、薬物療法も行います。

3. 診断と治療は、身体面だけではなく、心理・社会的要素に対しても行う。

顎関節症の中で、特に筋性顎関節症は心理・社会的要因と関連が深いとされていて心身症的側面を持っています。生活上のストレッサー(ストレスになる原因)が多い、不安感が強い、抑圧的である、睡眠障害が強いとの報告や、日中のかみしめと不安感、ストレス感受性、抑うつ感やいくつかの病前性格と関連があるとの報告があります。このように顎関節症には心理・社会的要因が関連することがあることから、それらを評価するために心理テストが必要な事があります。治療にあたっては関節、筋肉の身体面のみではなく、現在の病状が心身症的成り立ちであることを説明し、どんなストレスに弱いか、ストレスにであった時にどんな思考をするか、どんな身体反応が出るかなど自己認識してもらいます。自分の反応が把握できることが強力なストレス対策になります。

顎関節症の診察希望の方はご自分の主治医に紹介状を書いて頂き、金曜日午前(初診担当:和嶋浩一)の事前初診予約をしてください。外来診療のご案内はこちらです。

最終更新日:2012年5月1日
記事作成日:2012年5月1日

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