音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。
慶應義塾
HOME
病気を知る
慶應発サイエンス
あたらしい医療
KOMPASについて

ホーム > 病気を知る > リハビリテーション > 各種疾患のリハビリテーション > 脳卒中で麻痺した手の新しい治療法(IVES療法、HANDS療法)

脳卒中で麻痺した手の新しい治療法(IVES療法、HANDS療法)

のうそっちゅうでまひしたてのあたらしいちりょうほう

概要

脳卒中になると、一般的に損傷された脳の反対側の手足に麻痺(片麻痺と言います)が起こります。麻痺の程度は、損傷された部位や広がりなどにより異なり、リハビリテーションによる回復の見込みも変わってきます。通常のリハビリテーションにより、麻痺側上肢の実用性を獲得できるのはリハビリテーション対象者の3割~4割弱程度です。通常のリハビリテーションで、日常生活で使える程度の手の機能を回復するのは、発症早期より麻痺側の指が別々に動かせる程度の軽い麻痺の患者さんに限られています。そのため、麻痺が重い人では、日常生活ではもっぱら麻痺していない方の手を使うことになります。ただし、ここで注意が必要なのは、麻痺した手が実用的にはならなくても、日常生活で、補助的にでも麻痺している方の手を使ってあげたり、拘縮(関節が固くなること)の予防に努めたりすることが、手の機能維持や更なる回復には重要になるということです。

IVES療法/HANDS療法とは

ここでは2つの治療法を解説します。IVES療法(アイヴィス療法:Integrated Volitional controlled Electrical Stimulation)とHANDS療法(ハンズ療法: Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation)は、脳卒中上肢片麻痺に対して、随意運動介助型電気刺激(IVES)装置を使用した、基本的に共通の治療戦略をとるものです。

IVES療法では、IVES装置を単独で使用するのに対し、HANDS療法では手関節固定装具を併用します。つまり、IVES療法+手関節装具=HANDS療法となります。手関節装具は、手関節の状態に応じて使用するかどうかを決めるものなので、両者は同一の治療方法と総括できますし、「HANDS療法はIVES療法の亜型」という言い方もできます。これらを入院の上、1日8時間、3週間にわたって装着しながら、日常生活や作業療法訓練で麻痺側上肢の使用を励行していただく治療法です(図1)。

図1.HANDS療法

図1.HANDS療法

使用する装置

随意運動介助型電気刺激(IVES)装置は、特殊な携帯型の低周波電気刺激装置で、患者さんの麻痺した筋肉の微弱な活動を電極で感知し、その活動に応じた電気刺激を麻痺した筋肉に与えます。通常の電気刺激装置と違い、患者さんが自ら麻痺した指を伸ばそうとした時にのみ電気刺激が発生して筋肉が収縮し動きが誘発されますが、動かそうとしなければ筋肉は動きません。つまり、随意的な運動を電気刺激で介助するのです。ただし、安静時も非常に微弱な電流は電極から流れています。患者さんが自分で麻痺した指を動かそうとしても動かない場合でも、この刺激装置により麻痺で弱くなった筋肉の力を補助してくれますので、動かしやすくなります。電気刺激の強度は不快とならない強度に調整します。

手関節固定装具は手首を固定して手を機能的に良い位置に保つことにより、麻痺した上肢の筋緊張を弱め、より一層動かしやすくする働きがあります。手関節が掌側に曲がる傾向がある場合などで併用しますが、実施の可否を患者さんごとに医師が判断します。どちらかというと装着して頂く方のほうが多いと思います。
繰り返しになりますが、随意運動介助型刺激装置(IVES)と場合により手関節固定装具を1日8時間つけて、作業療法による訓練を行うとともに、訓練以外の時間でも麻痺手を積極的に使用していただくのがIVES療法/HANDS療法です。

治療の流れ

この治療では、随意運動介助型刺激装置(IVES)をただ使用するだけで良くなるのではなく、それを使って、1日8時間麻痺した手を実際の生活に則した動作で使うことによって効果が得られます。そのため、機械に頼るだけでなく、この装置を着けている時に特にどういう動作を行うようにするのか、リハビリテーション専門医と作業療法士による綿密な評価に基づいて、病棟のリハナース(リハビリテーション看護師)とともに、患者さんご自身にも生活場面での麻痺手の使用の仕方についてのプログラムを作成して積極的に取り組んでいただきます。
IVES療法と手関節装具を併用したものがHANDS療法です。ここではHANDS療法について図1でより具体的にお示しします。日中(朝7時~夕方3時)に、刺激装置(IVES)を使用していただきます。装置は、腕にマジックテープで留めたり、ウエストポーチに収納して携帯していただきます。患者さんご自身が指を動かそうとするとそれを機械が感知して電気刺激がされ、指を伸ばす動きを介助します。手関節固定装具は通気性に配慮したものを使用しており、極力、むれなどを防いでいます。装具を装着することにより、機能的な手の形となり、「つまむ」「離す」動作がしやすくなります。

この治療を受ける利点

これまで重度の上肢麻痺に対するリハビリテーションの方法は十分に確立されているとは言えませんでした。エビデンス(学術的根拠)に基づいた医療が脚光を浴びてくる中で、1990年代後半に米国で開発されてきたのがConstraint Induced Movement Therapy(CI療法)です。この治療法は、ある程度手指を意志に従って(随意的に)別々に動かすこと(分離運動)ができる程度の中等度~軽度の麻痺の患者さんを対象とした治療法です。麻痺していない側の上肢を拘束して使えない状態にし、強制的に麻痺側上肢を使用させるというもので、統計学的に意味のある程度(有意に)、運動機能を回復させうる治療法として脚光を浴び、広く実施されています。

しかし、それよりも重度の麻痺の患者さんはどうでしょうか?2000年代中頃まで、中等度以上の重さの麻痺に対して有効であるという治療法は、確立していなかったのです。慶應義塾では、この状況を変えるため、医学部リハビリテーション医学教室と理工学部の共同研究により、月が瀬リハビリテーションセンターや大学病院などにおいて、電気刺激や脳波を活用した新しい治療法を開発してきました。その1つが次に述べるIVES療法/HANDS療法です。臨床研究の成果として、この治療では「手指を伸ばす動きが目で見て分からない程度」という重度の麻痺であっても、筋肉活動が機械で検出できれば治療対象となりうることが明らかになりました。つまり上記のCI療法が適さないような中等度~重度の脳卒中上肢麻痺の方への、エビデンスに立脚した治療の範囲を大きく広げるものとなったのです。

さらに私たちは、2010年前後から、運動をイメージする際に出現する特殊な脳波を利用して機械を操作する訓練によって脳活動の変化を誘導する治療法、Brain-Machine-Interface(BMI)療法の実用化に成功しています。別の項(BMI療法)に詳しく述べていますが、この治療法では、もっと重度の麻痺があって、筋肉活動が全く機械で検出できない方への治療も実現しました。 このように、脳科学に基づいて、多分野の知識や技術を結集することで、これまで治療が困難であるとされてきた重度の脳卒中上肢麻痺に対する治療が、少しずつ可能になってきています。これらの治療法によって、重度の麻痺があっても、そこからの切れ目のない段階的な治療が可能となるよう、私たちはこれからも技術の更なる発展と、治療対象の拡大へ向けて、進んでゆきます。

治療期間

治療期間は3週間で、入院で行っております。治療前後の評価の期間も入れると4週間弱の入院期間が見込まれます。

副作用、有害事象

1日8時間電極シールを貼っているために、まれに皮膚が弱い方では、発赤、かゆみを生じることがありますが、一時的なものです。現在までに150名以上の患者さんに行っておりますが、その他の特に有害な事象は生じていません。

この治療を受けることができる患者さん

IVES療法/HANDS療法の対象となる患者さんは、次のような方です。

  • 脳卒中による片側上肢の麻痺がある方
    ただし、四肢麻痺、失調や不随意運動の方は除きます。下肢に対しては行っていません。
  • 指を伸ばす筋肉の筋活動が、装置で検出できる方
  • 座った状態で、麻痺した手を胸まで挙げることができる方
  • コミュニケーション可能で治療内容が理解できる方(失語症などの障害は多少あっても構いません。)
  • 重度の手指や手首の拘縮がない方
    *拘縮(こうしゅく)とは、指や手首の関節がすでに固くなってしまって、他動的に動かそうとしても動かせない状態のことです。痙縮(けいしゅく:筋緊張の高まりによって動きづらい状態)とは異なります。痙縮はある程度強くても適応可能です。
  • 歩行、身の回りの日常生活は自立している方(装具や杖を使っていても構いません。)
  • 発症から6か月以上経過し、回復期のリハビリは終了し現在自宅で生活されている方。
  • 中学生以上80歳以下の方

次の除外項目に当てはまる方はこの治療の対象となりません。

  • 重篤な心・肺・肝・腎・内分泌系疾患の合併
  • 急性の炎症性疾患への罹患や運動を妨げる整形外科疾患の合併
  • 高度の認知障害、重度の精神疾患の合併
  • ペースメーカーの使用、シャント術やクリッピング術などで体内(特に脳)に異物を有する方

なお、最終的な治療実施の可否判断は外来受診にて医師が総合的に判断をします。

慶應義塾大学病院での取り組み

これまでの患者さんの結果を総合すると、3週間のIVES療法またはHANDS療法により、麻痺手の運動機能が有意に改善することが明らかになっています。しかし、個人差もあり、改善がほとんどみられない方もいます。

あくまでも平均的な結果ですが(個人による差はあります)、

  • 指が伸ばせない、伸ばすことはできても、繰り返していると伸びなくなってしまう方では、指が伸ばしやすくなります。それにより日常生活では、麻痺した手で物を握って、離すことが以前に比べると楽になりますので、日常の様々な場面で、補助的に麻痺手を使用することが可能となります。
  • 指が伸ばせる方では、さらに指のコントロールが容易となり、1本、1本の指を多少別々に動かせるようになる可能性があります。こうなると、さらに麻痺した手で細かなつまみ動作が可能となり、本のページをめくるなどの動作が可能となります。
  • 指の機能だけでなく、我々の研究では、肩や肘の機能にも改善がみられます。
  • 効果は3週間の訓練が終わった後でも、ご自宅での日常生活で、麻痺手の使用を励行していただくことにより、治療終了後3カ月を経過した時点でもほとんどの方で機能が維持できています。(図2、図3)
図2.麻痺手運動機能の改善

図2.麻痺手運動機能の改善
3週間のHANDS療法前後で麻痺手指運動機能、肩・肘運動機能評価得点ともに有意な改善があり、その改善は治療終了後3か月経過した時点でも維持されていた。(脳卒中片麻痺患者さん30名の結果)

図3.日常生活上肢実用度の改善

図3.日常生活上肢実用度の改善
HANDS療法治療前ではほとんどの患者さんは麻痺手で「湯のみを口へ持っていく」や「本のページをめくる」ことができなかったが、治療後には半分以上の人がこれらの動作が可能となった。この日常生活での実用性の改善は、治療終了後3か月経過した時点でも維持されていた。(脳卒中片麻痺患者さん30名の結果)

費用負担に関する事項

ここで行われるリハビリテーション、治療については、通常の健康保険内で行う慢性期入院リハビリテーションと基本的に同じ費用がかかるとお考え下さい。IVES装置の使用には、対価は発生しません。手関節装具については、適応がある場合に医師が処方し、健康保険を使って購入していただきます。

治療を希望される方へ

上記治療対象に該当する方で、除外項目にあてはまらない方で、治療を希望される方は、主治医の先生または他院リハビリテーション科にかかっていらっしゃる方はリハビリテーション科の医師より、今までの経過や現在のお薬の処方内容がわかる紹介状をご持参のうえ当院リハビリテーション科外来(担当:里宇、大高、川上、田代)を受診ください。診察の上、最終的に治療の適応の有無を判断させていただきます。

大変申し訳ございませんが診療業務等に支障を来しますので、電話、手紙、FAXなどでの個別のお問合わせにはお答えできませんので、ご容赦願います。 なお半年以内に頭部MRIや頭部CTを撮影されておりましたら、ご持参いただけると助かります。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リハビリテーション科外部リンク
最終更新日:2016年12月15日

▲ページトップへ

慶應義塾HOME | 慶應義塾大学病院